犯罪捜査においてドライブレコーダーや市中に設置されている防犯カメラの画像を利用し、犯人追跡や逮捕の決め手になったといったニュースを頻繁に耳にするようになり、画像データの業務利用が一般化していることを実感する機会が増えています。

 

飲食店などの店内に設置したカメラの映像をもとに顧客の様子やホールスタッフの接客態度などを解析し、接客スキルの改善やスタッフの管理、少ない人数で効率的に接客を行うための動線の最適化や効率化などに取り組んだり、コンビニ入店後の顧客の動線と時系列の商品の販売傾向を商品を陳列する棚割りに活用する事例なども増えてきています。

 

当社の開発事例のひとつに、オープンソースのソフトウェアを使って、大規模な建設現場にある複数の建築資材搬入口に設置された汎用的な定点カメラの画像から、工事現場に侵入する大型トラックのナンバープレートの画像に含まれる文字列情報をリアルタイムで抽出し、自動で読み取りデータ化するシステムがあります。

 

建設現場では大量の車両が日々行き交いますが、指定業者の車両なのか否かを人手でチェックするのは限界があるため、画像処理のテクノロジーでリアルタイムに判定しているのです。

 

このように画像データをリアルタイムで解析処理するテクノロジーは、現在、幅広い分野や業種の業務の現場で活用されています。防犯カメラ、監視カメラ、コロナ禍で一気に普及した検温カメラなど、今やカメラはいたるところに設置されています。

 

街中のどこにカメラが設置されていて、自分がどのカメラにどのように写り込んでいて、それらの画像データがどのくらいの期間保管されており、どのように使われているのか、そしてデータは適切に破棄されているのか、普段の生活の中で気にしている人は多くはないと思いますが、これらの画像データは個人を識別できる場合、実は個人情報に該当します。

 

今日は、業務利用が進むカメラの画像データと個人情報保護法の関連、そしてプライバシー保護の観点からの利用や管理上の注意点について、考えていきたいと思います。

カメラの画像データは個人情報なのか?

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個人情報保護法では、保護の対象となるデータとして、以下をあげています。

 

・氏名、住所、生年月日など、特定の個人を識別できる情報
・顔写真や映像、音声録音など、個人を識別できる映像や音声情報
・メールアドレスや電話番号など、他の情報と組み合わせることで個人を識別できる情報
・パスポート番号、運転免許証番号、マイナンバーなどの個人識別符号
・病歴や犯罪歴など、特に配慮が必要な要配慮個人情報

 

個人情報と聞くと、住所、氏名、電話番号、メールアドレス、性別などの情報をイメージする人が多いと思いますが、特定の個人がカメラの画像から識別できる場合、個人情報に該当し、こちらも個人情報保護法の対象となります。

カメラの画像データは個人情報に該当するのか?

住所、氏名等のデータは、企業が収集した後、その管理に際して、多くがデータベース化するなどテーブル形式で体系だてて保存するため、個人情報保護法における「個人データ」や「保有個人データ」に該当します。一方でカメラで撮影した人物の画像データはどうなのでしょうか?

 

画像データは、従来型の防犯カメラや監視カメラからなど、記録すること自体を目的としているものから、近年急速に普及しているWebカメラなど顔認証システムと連携し、記録した画像から特徴量を抽出したり、IDなどの個人識別情報と組み合わせてメタデータとして蓄積し、マーケティング目的に利用したりするものまで、多岐にわたっています。

 

画像データを記録としてではなく、データ活用することを目的としている後者については、個人を特定できる画像データをデータベースとして管理しているため、「個人データ」や「保有個人データ」に該当することになります。

 

個人情報には、住所、氏名のような「構造化データ」だけではなく、写真や画像などの「非構造化データ」も含まれています。たとえ1つのデータだけでは個人が特定できなくても、他の情報と組み合わせて個人が特定できる場合は、個人情報に該当する点に注意が必要です。

 

企業が個人情報を収集・利用する場合は、適切な管理や利用目的の明示が必要ですが、カメラで記録する画像データについても同じことが言えます。また、画像から得られた情報を事業者が利用する場合は、通知・公表した利用目的の範囲内である必要があります。

 

プライバシーポリシーにも忘れずに明記しましょう。

【関連記事】プライバシーポリシーと個人情報保護方針に違いはある?目的や記載内容を解説!

画像データの収集に際して、留意すべき法令

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カメラで取得し、記録している映像が特定の個人を識別できる場合、その画像データは個人情報に該当し、個人情報保護法の適用を受けることになるため、以下の点に注意が必要です。

カメラの画像データ収集における注意点

・利用目的の明示(個人情報保護法 第17条)
・カメラで取得した映像をどのような目的で保存・利用するのかを明確にし、必要に応じて本人に通知または公表する(例:「防犯対策のため」「施設の安全管理のため」など)
・必要最小限の取得・保存(個人情報保護法 第18条)
・不要なデータを取得・保存しない(プライベートなエリアを記録しない、記録に残さない)
・保存期間を適切に設定し、保存期間を超過したデータは消去する(過剰な長期保存をしない)
・適切な安全管理措置(個人情報保護法 第20条)
・不正アクセス防止・暗号化・アクセス権の管理を行う
・第三者への提供の制限(個人情報保護法 第23条)
・本人の同意なく、映像データを第三者に提供しない(例外:警察の捜査協力など法令に基づく場合を除く)

カメラの画像データ収集に際して留意が必要な関連法令

カメラで画像データを撮影し収集する際には、個人情報保護法以外にその他の関連法令として、以下の法律・条例にも十分な留意が必要です。

 

・刑法(プライバシー侵害に関連する条文)
・労働関連法(職場における監視カメラの設置)
・不正競争防止法
・著作権法(映像の無断利用)
・迷惑防止条例(各都道府県)

 

個人情報保護法のみならず、プライバシー保護や肖像権といった人格的な権利・利益を侵害することがないよう、十分な配慮が求められます。

 

画像データはプライバシー性が高く、不正アクセスによる流出や内部から持ち出し等、悪用を防止するための事業者としての確実な管理も求められます。

【関連記事】事業者が遵守すべき個人情報保護法における義務とは?

【関連記事】個人情報保護法施行規則の改正ポイントをまとめて解説!

カメラ画像・顔特徴データ等を取り扱う場合の適切な管理

個人情報保護委員会が公表している個人情報保護法のQ&Aによると、以下のような措置が例示されています。

①組織的安全管理措置

例:カメラ画像等を取り扱う情報システムを使用できる従業者を限定する、事業者内の責任者を定める、管理者及び情報の取扱いに関する規程等を整備する等

②人的安全管理措置

例:従業者に対する適切な研修(個人情報保護法の適用範囲・義務規定、カメラ画像の取扱いに関する講義等)等を実施する等

③物理的安全管理措置

例:カメラ及び画像データを保存する電子媒体等の盗難又は紛失等を防止するために、設置場所に応じた適切な安全管理を行う等

④技術的安全管理措置

例:情報システムを使用してカメラ画像等を取り扱う場合や、IPカメラ(ネットワークカメラ、WEB カメラ)のようにネットワークを介してカメラ画像等を取り扱う場合に、必要とされる当該システムへの技術的なアクセス制御や漏えい防止策等を講ずる(アクセス制御には適切な場合にはパスワード設定等の措置も含む。)等

⑤外的環境の把握

例:外国において個人データを取り扱う場合、当該外国の個人情報の保護に関する制度等を把握した上で、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講ずること

カメラ画像を適切に利活用するために

経済産業省・総務省は、データ活用のニーズの高いカメラ画像を安全安心に利活用するためのガイドラインを策定していますが、個人情報保護法など関連法規の改正と同期をとる形で定期的にアップデートしています。

 

カメラはスマホやPCなどのデバイスに搭載され、家庭用防犯カメラ、介護やペットの見守り用途のIoT関連デバイスのカメラなど、安価なコストと豊富な種類で用途が急拡大しています。誰でも利用できるデバイスになったがゆえにプライバシーやセキュリティへの配慮が欠かせません。

 

事業でガメラや動画など、画像データを使用したサービスの提供や取扱いを計画されている方は、ご一読されることをお勧めします。

【参考】カメラ画像利活用ガイドブック改訂の概要

【参考】カメラ画像利活用ガイドブック

関連法規の遵守だけではなく、プライバシー保護への配慮も大切

今回は、個人情報に該当する画像データの取扱いや注意点について考察しました。

画像データの活用にあたっては、個人情報保護法の順守のみならず、取得後のデータへのセキュリティ面の確実な管理、カメラに写り込む人たちへのプライバシーの保護や関連法規への対応など、人権への十分な配慮も事業者として要求される大切なポイントとなる点についても見てきました。

 

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