近年、プライバシー保護の観点からCookieの利用に関する多くの制限が生まれています。
Cookie規制は、厳しい罰則を伴う法規制で企業にコンプライアンスを迫るものと、ベンダー主導の規制でCookieの生存期間を1日や7日に短縮したり、Cookieそのものを排除したりするものに分類することができ、それぞれに対策を行う必要があります。
法制度では、たびたび莫大な制裁金を課すことですっかり有名になったGDPRを筆頭に、日本国内においても改正個人情報保護法や改正電気通信事業法について、耳にする機会も増えています。
一方でベンダー規制で排除の対象となっているのはサードパーティcookieと呼ばれる、アクセスしているWebサイトとは異なるドメインが発行するCookieです。対策が先行しているのはAppleとFirefoxですが、Googleも2024年中のサードパーティcookieの廃棄を発表しており、これにより、現在世の中に存在するほとんど全てのブラウザで2024年中にサードパーティcookieそのものが使用できなくなります。
収集する情報やデータの質と量の低下は、分析結果の品質や信頼性の低下に繋がり、ビジネスを継続する上での競争力や顧客満足度の維持・向上にも影響を及ぼします。企業のWebサイトやサービスサイトを訪れるユーザの分析を今後どうすればいいか、マーケットを取り巻く急激な状況の変化に企業としての対応に苦慮している担当者も多いのではないでしょうか?
この記事では、Cookie活用に制限がかかる現代において、主にサードパーティcookieの活用難に対してどのような代替技術が存在するのか、代替技術を用いることでどのようなメリットを期待できるのかを見ていきます。
代表的なCookieの代替技術
Cookieの代替を期待できる技術は複数存在しますが、Cookieレス時代への過渡期とも言える現在において、明確な解はまだ定まっていない、というのが実情です。
代表的な代替技術を紹介します。
1st party Cookie
ファーストパーティCookieは、ユーザが訪れたWebサイトが直接設定し、そのドメイン内だけで利用できるCookieです。サイト内でのユーザの行動や状態を記録し、会員サイトにおいては、会員IDに該当する情報がファーストパーティCookie内に文字列情報として格納されている場合もあり、例えば、ショッピングサイトで商品をカートに入れたままの状態を長期間保持しておく機能などを実現しています。
新しい技術ではありませんが、サードパーティCookieの活用に多くの制約がある現在、高精度な情報収集を実現するために、ファーストパーティCookieを有効に活用することは、現時点ではまだ有効な選択肢と言えるでしょう。特にサーバサイドのファーストパーティCookieは、サードパーティCookieと比較しても、まだ規制の影響が小さく、今後も継続して活用が期待できるCookieと言えます。
ファーストパーティCookieの活用については以下の記事でも詳解しています。
合わせてご参考下さい。
【関連記事】:Cookie規制時代、ファーストパーティCookieのアクセス解析への活かし方
パケットやWebサーバログの活用
パケットとは、ネットワーク上でデータ通信を行う際に用いられる情報の単位です。
パケットキャプチャーは、Webサイトとユーザのやり取りをネットワーク経路上のいずれかのポイントでコピーを生成し、データを収集・分析する手法です。ユーザがアクセスしたコンテンツやWebサイト上での行動をリアルタイムでありのまま把握できます。閲覧した商品やクリックした広告など、ユーザの具体的な行動を基にタイムリーなマーケティング活動を行うことができます。
Webログとは、ユーザがWebサイトにアクセスした際にサーバ内で自動的に記録されるログデータのことを指します。ユーザが使用した端末の環境情報、IPアドレス、訪問時間、閲覧したページのURL、リファラー情報(どのページからアクセスしたか)、ファーストパーティCookieなどが含まれています。
ログを分析することで、ユーザがどのページのコンテンツに関心を持っているか、Webサイト上での行動パターンや行動履歴、どの時間帯にサイトへの訪問が多いのかといった情報を元にサイトの改善や効果的なメルマガ配信のタイミングなどを検討できます。
ゼロパーティデータ
ゼロパーティデータは、ユーザ自身の意思で企業と共有するデータを指します。「すべてユーザの同意が取れているデータ」とも言い換えられるでしょう。企業が第三者を経由せずに直接収集するデータをファーストパーティデータと言いますが、これに「ユーザの同意が取れている」という概念を加味したのが、ゼロパーティデータです。アンケートの回答や登録情報をはじめ、自身の趣味嗜好やコンテキストなど様々な情報が含まれます。
ゼロパーティデータは、予測分析の結果ではなく、ユーザ自身の意思で共有されたデータのため、他のデータと比較して高い信頼性と精度が期待できます。また、プライバシー保護の観点からも利点があります。ユーザが自発的に、使用目的に同意して情報やデータを提供しているため、データの使用に関するリスクは大きく軽減されます。
Topics
Google社が提唱・開発する新しいユーザ識別の手段がTopicsです。Googleが提供するブラウザであるChromeを使用することにより、デバイス内で完結するパーソナライズ技術を実現しており、ユーザは自身の情報を守りながら、かつパーソナライズされたコンテンツを利用することができるようになります。
企業側にとっても、ユーザ自身から提供されたTopicsにより、精度の高い情報収集を期待でき、ユーザのプライバシー保護とコンテンツパーソナライズの両立を期待されている技術です。
基本的には下記の仕組みで動作します。
1.動作の仕組み
Topicsは、ブラウザがユーザの閲覧履歴に基づいて、その週に関心の高いトピック(例えば「フィットネス」や「旅行」など)を選び出します。これらのトピックは3週間だけ保存され、その後削除されます。
2.プライバシーの保護
選定されたトピックはGoogleや外部サーバによっては処理されず、ユーザのデバイス上でのみ実行されます。性別や人種などのセンシティブなカテゴリは含まれません。
3.ユーザによるコントロール
Googleが提供するブラウザであるChrome上からの操作で、ユーザは選定されたトピックの表示や不要なデータの削除を行えるほか、機能自体を無効にできます。
4.広告配信の改善
ブラウザ上で処理された趣味嗜好をユーザからWebサイトへ提供することで、精度の高いコンテンツの配信が可能となります。
【参考】:Google プライバシー サンドボックスの新しい Topics API について
様々な代替手段が登場していますが、ファーストパーティCookieの活用やパケット・Webサーバログを用いた解析は、従来から存在する技術であるため安定しており、システム導入や運用のハードルも低いと言えるでしょう。
Cookieを代替する外部サービスの活用
Webマーケティングによって収集する情報の質や量、分析方法やその結果の活用範囲は、展開するサービスや事業規模により実に様々です。従って、Cookieの代替技術を検討することになった場合も、サイト更改自体にかかるコストや工数は、ごく限定的で小規模なものから、大規模かつ広範囲なものまで、千差万別となるでしょう。
いずれのケースにおいても、既に現在の環境に対応済みの外部サービスを活用することは、費用・時間の両面で有力な選択肢となりえます。
外部サービスのメリット
1.市場や法令への迅速な対応
サービスの提供自体をコア業務としている事業者であるため、市場や法令に関する情報収集やその対応が迅速に実施されることが期待できます。
2.運用担当者の負担を抑えやすい
複数の企業が利用しているサービスであれば、多くのナレッジやノウハウを蓄積しており、使いやすさに配慮した設計や機能を実現していることが期待できます。使用感の慣れや一定の習熟は必要ですが、製品マニュアルやサポートを活用することでトラブルを抑えながら運用できます。
3.導入負担の軽減
新たなシステムを設計・構築し、実際に運用を開始し、体制を維持するためには一定の人員、膨大な工数や専門知識、コストが必要となります。ほとんどの外部サービスは一定の使用料がかかりますが、自社側の費用・人員・時間的コストを抑えることができるため、トータルとしては独自開発と比べて、高い費用対効果が期待できるケースも少なくありません。
外部サービスは自社要件にマッチしないケースも当然ありますが、可能な範囲で自社の要件や運用方針を外部サービス側に合わせるといった対応を行うなど、この点をクリアにできれば、自社の負担を削減し、安定した長期運用を実現する有力な選択肢となるでしょう。
Cookieの代替技術の導入は十分な検討と計画を!
Cookie規制をはじめとしたプライバシー保護は、世界各国への広がりを見せており、今後も規制は強化されていくでしょう。
情報収集を行うハードルは高くなっていきますが、多くの企業がWebを通じて有益な情報収集、コンテンツ提供の実現を模索しているなかで、自社のマーケティングを環境の変化にどのように適応させるか、競争ではなく共創の考え方が重要な局面ではないでしょうか?
時代が大きく動いている中、自社のマーケティング手法を検討するにあたり、自社単独で方式を検討したり、ソリューションを評価したり、システム開発を行うことに一定以上のリスクを感じる企業も数多く存在すると思います。そのような場合は、すでに規制や法令に対応している外部サービスの活用が有効です。
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